ザックジャパン アジアカップ２０１１ヨルダン戦 詳細分析

さて、いよいよザックジャパンの公式戦初戦の闘い。

相手は、ヨルダン。

アジアカップ２０１１
1月9日（日） 16：15（現地時間）＝22：15（日本時間） / 会場：ドーハ（カタール）

日本１ー１ヨルダン
得点者：吉田麻也（後半47分）、ハサン（前半45分）

メンバー

ＧＫ
川島　永嗣　　　　1983.03.20　185cm　80kg　リールス（ベルギー）

ＤＦ
今野　泰幸　　　　1983.01.25　178cm　73kg　ＦＣ東京
長友　佑都　　　　1986.09.12　170cm　68kg　チェゼーナ（イタリア）
内田　篤人　　　　1988.03.27　176cm　67kg　シャルケ０４（ドイツ）
吉田　麻也　　　　1988.08.24　187cm　81kg　ＶＶＶ（オランダ）

ＭＦ
遠藤　保仁　　　　1980.01.28　178cm　75kg　ガンバ大阪
松井　大輔　　　　1981.05.11　175cm　64kg　トム・トムスク（ロシア）
→岡崎　慎司　　　　1986.04.16　174cm　76kg　清水エスパルス（後半13分）
長谷部　誠　　　　1984.01.18　177cm　65kg　ボルフスブルク（ドイツ）
本田　圭佑　　　　1986.06.13　182cm　76kg　ＣＳＫＡモスクワ（ロシア）
→藤本　淳吾　　　　1984.03.24　173cm　69kg　清水エスパルス（後半45分）
香川　真司　　　　1989.03.17　172cm　63kg　ドルトムント（ドイツ）

ＦＷ
前田　遼一　　　　1981.10.09　183cm　80kg　ジュビロ磐田
→李　　忠成　　　　1985.12.19　182cm　73kg　サンフレッチェ広島　（後半0分）



ヨルダン

ＧＫ：
1シャフィ
ＤＦ：
3サルマン
8バシャル
15シャディ
16バセム
17ハテム→5 アルドゥメイリ（後半35分）
ＭＦ：
4バハー
7アメル
18ハサン
ＦＷ：
9オダイ
14Ａ・デイブ→21 Ａ・ハリム（後半27分）


試合展開は予想通り。

まず、昨秋の日韓戦のレポで書いたように、前田＋本田＋香川＋松井の攻撃は、裏へ抜け出すスピードが足りないので、機能し辛いということです。


それでも、この４人は、テクニックや動きの質自体は高いので、なんとかチャンスは作りますが、日本の良さを活かすなら、この組み合わせには無理があると当ブログは考えています。

その証拠に、前半、香川から松井へ素晴らしい対角線へのロングボールがありましたけど、松井は追いつけませんでしたし、本田が抜け出した場面もやはりボールに追いつけませんでした。

このような、相手の一瞬の隙をついて裏へ抜け出すボールに誰も追いつけないというのは、典型的な遅攻地獄へ追い込んでしまうことが多い。


攻撃の４人が足元にボールを貰いたがる選手ばかりで、なおかつ裏へ抜けるスピードが無いために、必然的にサイドバックが上がらないと機能しないようになってしまう。

これは、カウンター狙いの相手としたら、思うつぼですね。

悪い時のガンバ大阪の攻撃みたいです。
で、安田が上がった裏取られて一転大ピンチみたいな。


とはいえ、ヨルダンの方にほとんどチャンスらしきものはなく、成長した内田が素早い潰しでピンチを未然に防ぐ場面も多かったです。

ところが、あっけなく失点してしまう。

この場面は、まず、ヨルダンが対角線にロングパスを出し、それに長友が上手く対応したのですが、二人で挟み込もうとしたところを交わされ、一転ピンチになり、あろうことかカバーに入るべき遠藤がスライディングに行ってしまい交わされ大ピンチ。
あわててカバーに入った吉田の足に当たり変化してゴール。


まあ、吉田の足に当たってなければ、川島がセーブしていたところなんでしょうけど、この場面では完全に崩されているところが良く無いですよね。

基本的には、ポジショニングのミスにミスが上乗せされてます。


DFがサイドに引き出されてバイタルが空いてしまってるわけです。
しかも、ディアゴナーレ（段差で守る）が組めていない。
カバーリングが上手くいってません。

人数は居るのですが、ボールウォッチャーになってしまっている。

これは、正直、岡田ジャパンで、よく見た光景です。

ザックジャパンになってポジショニングやカバーリングの徹底をずっとやってたわけですけど、昔のセオリーが出てきてしまったというわけです。

前半の前半は、守備時のポジショニングがとても上手くいっていたのですが、段々忘れていってしまったようです。


そして後半、この問題点を是正するためにザッケローニは動きました。

前田に変えて李忠成

李忠成の方が、裏へ抜けるスピードがあるからです。
これは、当ブログと同じ判断だと言ってよいと思います。


で、機能するようになったのか？というとならなかった。

なぜか？

李忠成が裏へ抜ける動きをしなかった為ですね。
真ん中でドンと居座ってしまった。

こうなると、李忠成に替えた意味が無い。

で、次の手を打ちます。
松井に替えて岡崎投入です。
これは、入れる前から機能する事が分りました。


で、ザッケローニは、更に気が利いていて、本田を右サイドに移し、香川トップ下、左サイドに岡崎という布陣にしたわけです。

この意図は、天皇杯の鹿島戦でも見られたサイドに基点を作って、相手のディフェンスをサイドに引きつけ、逆サイドに振って、揺さぶり、バイタルを空け、そこに香川や本田が飛び込むというカタチです。

これは、ポストプレーが上手くてキープ力の高い本田＋スピードのある内田＋機動力のある岡崎＋スペースのギャップを突く事が上手い香川というのが、上手く連動する事が出来るようになったわけです。


ただし、CFの李忠成の役割が消化されきれていなかったように感じます。
李忠成と本田と香川の関係が、もう少し整理されたら、もっと得点の匂いがしたのではないかと思います。
この辺が、北京オリンピックの時の食い足りない部分だったように思いますし。。


そしてもう一つ。

せっかく本田をサイドにして基点を作ることが出来たのに、直ぐにポジションチェンジをして本田が中央に入ってきてしまうわけです。

この際に、本田と香川のポジションが重なり、相手はバイタルを締める守備をするわけですから、中央の守備が厚いわけで、それを突破するために、内田がサイドを単独で突っかけて簡単にボールを失ったり、本田が無理に突破しようとしたりしたわけですが、これはあまり褒められた攻撃では無かったと思います。

もう少しカウンターの強いチームでしたら、カウンターで失点しかねないと思いますし。

なので、本田に替えて藤本を入れたのは、本田の戦術理解が充分で無かった事が原因だと思います。

で、身長が高い吉田を前線に入れて単純なパワープレーをするわけですね。

吉田に当てて落としたところを藤本や香川や岡崎という機動力のある選手達が拾ってという攻撃。


この時点でCFの李忠成は、ようやく、役割を明確に理解して活躍始めるわけです。
明確なポストプレーヤーである吉田が入ったことにより、裏へ抜ける動きが出来るようになった。

これにより、相手センターバックのマークがずれてバイタルが空くようになった。
ロスタイム、日本の攻撃が機能したのは、そういう理由だったと思います。

得点シーンは、長谷部のクロスが素晴らしかったですし、吉田のヘディング、凄まじい高さでした。

吉田のポテンシャルの高さは充分実感出来る内容だったと思います。
この試合、ゴールネットが３回揺れたわけですが、全て吉田でした。


そしてやはり、引いた相手には、高さが必要である事を痛感した試合でした。

正直、始まるまでは、ザッケローニもアジアでの闘いをなめていた部分があったと思います。
なので、高さやスピードのあるスーパーサブ的な選手を代表に呼んでなかった。

でも、おそらくこの１戦で、考えを変えるのではないかと思います。

今大会、ザッケローニが選んだ前田や李忠成というのは、トラディッショナルなセンターフォワードタイプなのですが、２０１４年を見据える時、日本代表は、やはりより先鋭的な、ハーフナー・マイクや指宿や都倉といった高さのある選手、そして永井や興梠のようなスピードスターを必ず必要とすると思います。


最後にもう一つ、この試合で、「攻撃のスピードが遅かった」という事がザッケローニから言われたわけですけど、これは足元へのパスばかりになって判断が遅くなったことと、前述したような裏へ抜けるスピードのある選手が居なかったことに起因するわけですが、

一つ指摘したいのは、日本代表のパススピード自体はスゴく速くなっていたということです。

これは注目すべきだと思います。


以前の日本代表は、動きながらパスを引き出し、そこに緩いパスを出す攻撃でした。

しかし、世界レヴェルを目指すなら、それでは通用しないでしょう。
もっとパススピードを上げなければ、ボールを取られてしまいます。

おそらく、今回のパススピードは、岡田ジャパンの時から比べると1.5倍は速くなっていると思います。

これは、皆が正しいインサイドキックを蹴るようになった結果です。
インステップキックの体勢からサイドキックを蹴らないとスピードのあるパスは通りません。


素晴らしいのは、そのスピードあるパスを多くの選手達が充分コントロール出来るようになって来たということです。

これは、日本代表の選手達の多くが欧州でのパススピードに慣れてきたという事が大変に大きいと思います。


ただし、新しく入ってきた李忠成とかは、このパススピードに付いていけなかったようです。李忠成がもう一つ活躍出来なかったのは、ここにも原因があるはずです。
これも慣れですね。

そして、李忠成は、もっと裏へ抜ける動きをするべきです。裏へのパスになら動き出しと駆け引きで追いつくことが出来るはずです。



そして、現在はこのパスを足元で回しているわけですけど、これをスペースへ人が動き出すタイミングでスペースへ出すことが必要になってくるわけです。そうしないと、パスが回るだけで何も起きません。
日本代表改造計画４　バルセロナのパス回しの本質を掴めも参考に



ただし、ヒロミジャパンのパラグアイ戦の時ヒロミジャパンのパラグアイ戦の時は、パスコースに動いて貰うという事は出来ていたわけです。

当時のパスは現在ほど速くありません。
でも、勝負所のパスのスピードは速かった。

所謂　緩急が出来ていたわけです。

今回の日本代表にアドバイスを送るとしたら、もっと緩急を意識してプレーした方が良いという事ですね。

そうすると、スペースへ動くタイミングも取りやすくなりますし、速いパスを出した時の威力も高まります。

そして、パスの出し手も貰い手も、共にスペースへの動き出しを意識してほしい。

ということで、シリア戦を楽しみにしています。
シリア強いらしいです。



text by
contemporary creation+
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