なぜオランダは敗れたのか?ワールドカップ南アフリカ大会決勝 オランダ対スペインのつづきです。
僕が初めてワールドカップのスゴさというものを身を以て体験したのは、1994年アメリカ大会のことだ。
当時、欧州の美術と服と建築を見るために、生まれて初めて一人で1ヶ月以上の長旅をしていた。
ニース、モナコ、マントン、カンヌ、エクスアンプロヴァンス、ニーム、バルセロナ、フィゲラス、マドリッド、セビーリャ、グラナダ、ロンダ、グアディス、アルへシラス、リスボン。。
南欧を走破する旅である。
初めてのスペインは、フランスからの電車の中でスペイン語を即席で憶えた。
なんとか憶えたのは、以下の3つの言葉だ。
オラ(こんにちは)
グラシアス(ありがとう)
ドンデ エスタ エスタシオン レンフェ(国鉄の駅はどこですか?)
それでなんとか乗り切った(笑)
初めてのスペインは見るもの全てが新鮮だった。
一番驚いたのは、バルセロナのコインロッカーで、空港の荷物検査のような厳重なチェックが行われていることだった。
そして、バルセロナの街のメインストリートには30メートル置きにマシンガンを持った兵隊が立っていた。
今でこそ欧州ではよく見かける光景で慣れてしまったが、日本の安全な街に暮らしている身には、衝撃的なことだった。
当時、スペインはバスク独立派の闘争が続いており、爆弾テロなどが起きていたのだ。
そんな中、バルセロナだかマドリッドだか忘れたのだが、どちらかの街のホテルでワールドカップの中継を見ていたのである。
画面に映っていたのは、スペインの試合。決勝トーナメントの1回戦であったと思う。
その試合、スペインが勝利した。ベスト8進出を果たしたのだ。
その時に起きた衝撃を今も僕は忘れない。
その瞬間、街中に地鳴りのような音がして、ホテルが揺れたのだ。
一瞬何が起きたのか全く分らなかった。
地震か?それとも爆弾テロか?
いや、それは、人々の歓声とクラッカーや爆竹の音だった。
スペインの勝利を喜ぶ人々の歓声だったのである。
僕は鳥肌が立った。
サッカーとは、人々をこんなにも熱狂させる事が出来るのか?
そして、共に喜ぶことが出来るのか?と
その日以来、僕は、いつか日本でこの感覚を共有出来るようになりたいと強く願うようになった。
街中の全く関係の無い人が、皆で喜びあえる瞬間をいつか見たいと強く願うようになった。
当時、日本代表はドーハの悲劇でロスタイムに出場を逃していた。
まず、そのためにはワールドカップに出場すること。
そして勝ち上がることが必要だ。
2002年と今回、日本はベスト16まで進出した。
しかし、まだまだアノ時の興奮には足りないと思う。
そして一方のスペインである。
スペインは、ユース、オリンピック年代で数々のタイトルを獲得してきたけれど、なぜかワールドカップはベスト8止まり。
その理由は、スペインサッカーの特殊な成り立ちにあると考えられている。
つまり、バルセロナとレアルマドリッドの宿命的なライヴァル関係である。
それはライヴァルという関係を超えて、政治的な対立そのものだった。
バルセロナというクラブはスペインにおけるフランコ独裁を倒すレジスタンスの拠点として機能したクラブだからだ。
いわば、サッカークラブ、スポーツクラブが政治的なのだ。
バルセロナは、カタルーニャという地域そのものに根ざしている。
そして、レアルとバルセロナだけではなく、バスクという対立軸を抱えている。
それが、スペイン代表が上まで行けない最大の足かせになっていたことは間違いない。
そして今回、スペイン代表は監督を元レアルマドリッド監督のデルボスケを招いた。
従来であれば、このレアル人脈でスペイン代表は作られていただろう。
しかし、デルボスケは、ある重要な決断を下す。
それは、チームの中心の6人(ヴィジャを含めると7人)をバルセロナの選手にしたのだ。
これは、従来のスペインからすると考えられないような選択だったといっていい。
レアルの監督がバルサを中心にチームを作ったのだから。
そして、脇をレアルの選手達で固めたのだ。
なので、スペイン代表は、さしずめバルサ+レアル連合軍のようになった。
しかし、それだけでは何かがまだ足りなかった。
その足りない何かとは、シャビアロンソである。
彼こそは、バスクの星と呼ばれる男だったのである。
バルサのパスサッカー、レアルの守備、そしてバスクの心臓をくわえて、デルボスケのスペインは、本当のスペイン代表になったのだと思う。
今回のワールドカップ南アフリカ大会、スペインの決勝戦の最高視聴率は、なんと90%を超えたそうだ!!
今大会を通じて、スペインは様々な対立軸を乗り越えて、スペイン代表としてワールドカップのタイトルを勝ち取った。
その事を僕は素直に祝福したいと思う。
スペインのサッカーは美しかった。
パスもドリブルもその他の面でも。。
翻って我が国の代表はどうだろう??
なぜ、今回Jリーグ3連覇中の鹿島の選手は誰一人出場しなかったのだろう??
森本はなぜ出場出来なかったのか?
あるいはその昔、北澤やカズはなぜ外されたのか??
彼らは全て読売ヴェルディ出身の選手達である。果たしてそれは偶然なのか??
そこに僕は、かつてのスペインと同じ政治的な対立を見るのである。
そして、たとえばチョン・テセはなぜ日本に3代も住んでいるのに韓国籍で、しかも北朝鮮代表なのだろう??
そこにも様々複雑な思いがあることは間違いない。
そういう様々な事を今直ぐどうこうは出来ないかもしれない。
しかし、私達も様々な対立軸を乗り越えて、真の日本代表のサッカーが見たいとは思わないだろうか?
そして、そうしなければ、私達のサッカーが世界の頂点を極める時は絶対に来ないのではないか?
そう思うのだ。
その時がいつになるか?分らない。
でも、当ブログは日本代表をワールドカップで優勝させるために、これからも歩んでいきたいと思います。
次回のサッカーブログはワールドカップベストイレブンの発表です。
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