U17ワールドカップナイジェリア大会 日本対ブラジル
黄金世代ならぬ『プラチナ世代』の形容詞で言われるU17日本代表。
荒削りでミスも多いが、それはそれ、とても面白い試合だった。
日本とブラジルが互角の闘いをする、というより、実力が本当に五分だったのは、いつ以来だろう?
そう、あれは2001年のコンフェデの日本対ブラジル以来のことだ。(当時ワシントンがフォワードだった)
今回のブラジルは、肝心のところでミスを連発してチャンスをふいにし続けていたので、決してすごく強いブラジルでは無かったと思うが、クオリティーのある選手自体は居て、特に先取点決めたギリェルメの名前は記憶しておいた方が良いかもしれない。
それでも、いくつかの手痛いミス(横パスのミス)や、キーパーのキャッチミス、パンチングミスなどなどあったにせよ、局面の勝負では、攻撃の面でも中盤の攻防においても守備においても、日本がブラジルを上回る場面が続出したのもまた事実である。
日本は充分アグレッシブだった。
特に、ガンバのトップ出場経験もある宇佐美貴史は、僕が見た限り、一度もブラジルからボールを奪われることが無かった。これには本当に驚いた。
相手が、それほどハイプレッシャーをかけてきたわけではないとはいえ、相手はブラジルである。
あの、独特の間合いから産み出されるキープ力は、本家のブラジルを圧倒的に上回ったといっていい。こういう希有な技術を持った選手を育成(システム的呪縛)で潰さないようにしていきたい。こういう他と違う感性を持った選手は、よってたかって個性を奪われて消えていく場合もまた多いのだから。
彼はシンプルなプレーが出来て体力のある選手とコンビを組ませる事によって活きるはずだ。
宇佐美のキープ力のおかげで、周りの選手が落ち着いてプレー出来てきた。
それだけではなく、周りを走り回る献身的な選手のおかげで、宇佐美がキープしながらスペースを開けることが出来たのである。
この試合では、ボールを狩るための献身的な動きが出来る選手が居て、ボールを失わずキープ出来る選手が居て、フィニッシュを決められるスピードのある選手が居た。
しかし、残念なのは、サイドからの展開が少なかったこと。
これは、一つには、視野が狭くてオーバーラップする選手が見えていないこと。
そして、クロスの質が悪い。(それはクロスを上げる位置と同時に、合わせる選手の不足も含め)
日本は抜群の攻撃力で中央をかなり突破出来ていたが、将来を考えれば、よりサイドを突破していく術を知らなくてはならないだろう。
もひとつ課題を上げれば、やはりポジショニングが悪い時間帯があるということだ。
日本の2得点も素晴らしいものだった。杉本健勇には高さもスピードもゴール前での落ち着きもあった。
ブラジルの1点目はスーパーゴールで、しょうがないとして、2点目は、あきらかにオフサイドだった。
共に仕方ない失点といえよう。
しかし、再三凡ミスによるピンチもあったし、そこで点が入らなかったのは、ブラジルの技術の無さに再三助けられた結果でもあった。
ロスタイムの失点は、出会い頭の事故みたいな気もするが、日本最大の弱点を突かれた当然の結果でもあった。2−3の惜敗。
日本の弱点。
それは、アーリークロスからの守備に弱いことだ。
それもフリーキックにおけるアーリークロスからの失点がやたら多い点である。
これは、きっちりマンマークにつけてないということ、こぼれ球に対する瞬時の反応が鈍いこと、など、様々な原因が考えられる。
が、今回は、キーパーのミス、そしてキーパーとディフェンダーの連係ミスだろう。
今回の日本代表、残念ながらゴールキーパーは世界レベルに達していない。
そんなわけで、互角の試合を演じながら、負けてしまったU17日本代表。
しかし、その可能性については大いに感じさせてくれた。
今後の試合が楽しみにもなる。
ただ、前回のU17ワールドカップで大活躍し、圧倒的な技術力を見せつけた柿谷選手(現セレッソ大阪)が、その後伸び悩んでいるのを見るにつけ、これら若い選手が、イングランドやスペイン、ブラジルやアルゼンチンのようにグングン伸びていく為の育成方法については、きちんと考えていかないといけないと思う。
宇佐美や杉本などは、もうフル代表に呼んでもいいと思う。
高いレベルでやればやるほど、彼らは成長していくはずだ。
FIFA U-17ワールドカップ2009・グループB第1戦、日本代表vsブラジル代表戦のハイライト動画
日本2
GK:1嘉味田隼
DF:2岡本拓也
3廣木雄輝
4松原健
5内田達也(cap)
MF:10柴崎岳
11高木善朗
13堀米勇輝
→16 小川慶治朗(後半31分)
14小島秀仁
FW:7宇佐美貴史
9杉本健勇
ブラジル 3
GK:1アリソン
DF:2クリスティアン
3ジェルソン(cap)
4ロマーリオ・レイリア
MF:5エリベウトン
7ジョアン・ペドロ
8ウェリントン
9ゼジーニョ
→16 カシミロ(後半36分)
10コウチーニョ
→20 ウェリントン・シウバ(後半42分)
14ギジェルメ
FW:11ネイマール
text by contemporary creation+
http://www1.parkcity.ne.jp/ccplus/
関連記事
サッカー日本代表対オランダ戦と日本サッカーのこれから
イチローのメジャー2000本安打とサッカー日本代表が進む道
速い選手が70%の力でプレーする重要性
サッカー日本代表対ガーナに見る守備の崩壊
岡田ジャパン3連戦総括と日本代表の未来
トルシエジャパンは強かった!?